舟木一夫の出演映画 その3
引き続き、舟木一夫である。66年の映画出演も65年同様に日活での主演作が続いていた。

「哀愁の夜」は、舟木の35枚目シングルタイトルでもある。ある夜、弁護士見習いの舟木と和泉雅子が出会うのだが、和泉の役は「Qプロダクション代表取締役」で、ちなみに当時18歳。Qとは「オバケのQ太郎」のことで、オバQのアニメやら人形やらを製作する会社という設定。当時は「オバQブーム」だったそうで、テレビアニメが65年からスタートしており原作とともに人気を呼んでいた。実際のアニメ制作は東京ムービーである。和泉の父親役が神田隆で、藤竜也が舟木の小中学校時の友人だが今はヤクザという男。その恋人がバーのマダムである山本陽子で、従業員(ホステス)が中野味和子(後に沢知美)。他に浜田寅彦、浜川智子(浜かおる)、武藤章生、大森義夫、波多野憲など。

「友を送る歌」は、舟木の36枚目シングルタイトルでもある。今回もヒロインは和泉雅子で、この辺りは彼女で固定されている。話の流れは「哀愁の夜」によく似ている。北海道から上京してきた舟木が和泉と出会うところから話は始まる。舟木は先に上京していた友人・山内賢を探すが、彼はヤクザの手先になっており、密輸品の運び屋をしていた。舟木は彼を悪事から手を引かせようとする、というのが大筋。和泉の父親役が江戸家猫八で、ヤクザの親分が土方弘、子分が野呂圭介、土方の愛人が中野味和子(沢知美)。他に二谷英明がゲスト的に登場したりする。

「絶唱」は舟木の41枚目のシングルタイトルでもあるのだが、当初は歌う予定はなかったという。何故なら本作は今までと違い、58年に浅丘ルリ子、小林旭のコンビで映画化されたもののリメイクだからで、原作は大江賢次の小説だ。再映画化に伴い、日活の宣伝部が「舟木君の主演作で彼の歌がないのはおかしい」とクレ-ムを入れ、急遽曲が作られたのである。今回のリメイク版は、舟木と和泉雅子のコンビで他に太田雅子(梶芽衣子、58年版では香月美奈子)、志村喬(58年版では三津田健)、山本勝(同・安井昌二)、花沢徳衛(同・小杉勇)、初井言栄(同・山根寿子)などである。ちなみに、75年に東宝でも三浦友和、山口百恵の黄金コンビで映画化されており、他に木内みどり、大和田伸也、辰巳柳太郎など。花沢徳衛と初井言栄が66年版に引き続き出演しているが、花沢は別役である。

この3本以外に東映の「太陽に突っ走れ」にも顔を出している。主演が千葉真一で、このタイトルだとアクションっぽいものを想像してしまうが、これは作曲家遠藤実の自伝を映画化したもので、つまり千葉が遠藤実(劇中では進藤孝)なのだ。そう考えると凄い違和感を感じる。遠藤本人は出演こそしてないが、音楽を担当。その門下生である舟木や梶光夫、一節太郎、楽曲提供を受けた島倉千代子、こまどり姉妹、北原謙二、扇ひろ子、遠藤の名を使ったレーベル「ミノルフォン」の1号歌手である三船和子などが本人役で出演している。この中で実績では一番の島倉はノンクレジットのようだ。その島倉と北原以外は引退者はいるが、今も健在(のはず)である。
66年のテレビに目を向けると、「銭形平次」がスタートしている。舟木の歌うお馴染みの主題歌はアレンジの変化はあったが18年(888話)に渡って流れることになる。舟木は第3話にゲスト出演したのを皮切りに最終話にも登場したが、全部で7回の出演と意外に少ない。特に394話(73年)の後、最終話(84年)まで出演していないようなので、10年以上の間が空いていたことになる。
平次役は宇津井健、宝田明、里見浩太朗などが候補に挙がり、本郷功次郎で決まりかけた時に、長谷川一夫がTBS系で「半七捕物帳」に出演することがわかり、対抗するには大川橋蔵しかないと急遽変更になったという。長谷川は映画版での平次を多く演じていた。橋蔵も最初はテレビ出演を嫌がっていたという説もあるが、橋蔵自身は会見で「僕のテレビ出演を願うファンレターも多く届いており、時期的にも今が一番いいと思ったので引き受けた」と語っている。制作が東映になったのは「気心が知れている方がいい」という橋蔵の希望である。

話を戻すと舟木はこの66年、石坂洋次郎原作のドラマ「雨の中に消えて」で松原智恵子と主演を務めている。映画の方は63年に日活で吉永小百合、高橋英樹、笹森礼子、十朱幸代らの出演で公開されている。ドラマの方も日活の制作で舟木、松原の他、広瀬みさ、伊藤るり子、杉浦直樹、菅原謙次、川地民夫などが出演している。菅井きんは映画とドラマ両方で同じ役を演じている。主題歌「雨の中に消えて」は「絶唱」のB面に収録されている。映画版は同タイトルの曲を吉永小百合が歌っているが、全く別の曲である。