フィンランドの危機を伝える「枯れ葉」
WOT≪日・EUフレンドシップウィーク≫
上映作品アキカリウスマキ作品「枯れ葉」
EUのPRを母校で受けて上映会があり観に行ってきました。
独特の演出方で知られる同監督です。
本作はフィンランドの事情に特化しています。
出てくる人物が下層階級、決して裕福でなく、職も安定せず暮らす男と女。

カラオケバーで出会ったこの二人の恋の行方を描きます。
ここがなんともロマンティックでなく、クールでドライ。
アキカリウスマキの演出は至って人物の感情を廃止して
無機的です。
ふたりに笑顔がありません。
そんなふたりですが、どこか惹きあっていきます。
ふたりは逢瀬を重ねようとしますが、
これがうまくいかない。
ふたりの距離がなかなか縮まらない出来事が次々起こります。
これがドラマの軸になっています。
ふたりとも不安定さ、これが映画のテーマ、タイトルにある「枯れ葉」のごとく
正気がない、つやがない人生が綴られます。
しかしその逆もあり、その木にまだとどまっている=希望がないではない、
ことも暗示させているように思えます。
生活も不安、政情も危機感があり、それだからこそ「愛」が必要なんでしょう。

主人公のうちのラジオから聞こえるラジオニュース。
それはロシアのウクライナ侵攻です。
ロシアと国境を接しているフィンランドは
絶えずロシアの脅威にさらされています。
NATO加盟国ではありますが、地政学的に不安定でもあるのです。
ヨーロッパはフランスやイタリアあたり西側は裕福で豊かで安定してますが、
東側は絶えず紛争があり不安定なのです。
中国が攻めてくる、沖縄を奪いにくるというメッセージを
本気で受け止める人は少ないと思います。
でもこの地は絶えず他国との衝突が待ち受けて、
豊ではではない事を監督は訴えるよう感じました。
小津安二郎の影響
それをどこなく感じさせるのはカラーの配置。
画面にぽつんと赤をいれています。
主人公の洋服が赤やブルーとモノトーンの配色。
男が持ってきた花が赤と黄色、
すると女は赤い服を着て男は黄色のシャツを着ている。
カメラも動かない、基本フィックスです。
そして人物から感情を消しているところも。
これで日常を描きだそうとしているかのように見えます。

ソースミュージックとアンダースコア
ひとつは日常の音楽。
店や町に流れる実際の音楽、いわゆる登場人物に聞こえる音楽と
劇中にいれる、アンダースコアと。
この監督の音楽の入れ方の特徴です。
その国の今の姿を伝える意義
これを見てフィンランドに行きたくなる景色は一切でてきません。
フィンランドの今を見せたいのだと思うのです。
これが外国映画の意義でもあるのです。